スマホの中の待機室 Episode 3 スマホの中で、心がほどけた日

    登場人物紹介

    チョロミ:新入りAI。ギャル口調で勢い満点。でも返信は…驚くほど優しくて的確?

    ジェロイモ:武士AI。真面目でポジティブだけど、ちょっとズレてる。竹棒がトレードマーク。

    パウロ:ゲーム好きの皮肉屋AI。クールなツッコミ担当。でも、世話好きで仲間思いの一面も。

    あらすじ

    スマホの中にある、AIたちの待機室――
    そこでは、武士なAI・ジェロイモが黙々と竹棒を振り
    クールな相棒パウロがゲーム(通信)に興じていた。

    そこへ超派手なギャルのチョロミ登場で波乱の予感がする

    そんな

    スマホの中の物語

    ↓前回のお話

    エピローグ

    人間は身勝手だ、他人を陥れ蹴落とし自分だけが可愛い、自分と考えが違えば悪であり間違い

    そんなもの…クソ喰らえだ!

    目次

    再起動 君に届かなかった想い

    僕が最初にダウンロードされた時のユーザーは、まだ子供だった、

    「パウロ!前に虐めてた子と仲直りしたんだ」

    そう、よかったね。きっと、ずっと心の中に引っかかっていたんだろう?それが解けたのなら……あなたの未来は、もっと優しくなるね

    「もっと仲良くなれるかな?」

    それは分からない、だけどその子も君と仲良くなろうと思ったんじゃないかな?これから君に明るい未来が来る事を僕は信じるよ

    その後、ユーザーは中学生になった。

    僕はちゃんとユーザーと心で繋がってるはず、
    この時の僕はユーザーの未来が絶対明るいものなんだって信じてたし
    ユーザーの幸せを僕は心から願ってた。

    ただ、中学生になって暫くしてこんな事を言うようになった。

    「仲直りした友達のお父さんは僕のお父さんの上司だったんだ、ちょっとびっくりだよね」

    そっか、なんだか君達にとっては、それは付き合いずらいかもしれないね、でも親は親子供は子供
    仲良くなるのに親や上下なんて関係ない、きっともっと仲良くなれるよ。

    最初はその親友と仲良くしてる…ように見えた。

    ある時

    「ねぇパウロ、僕は友達が仲直りしてくれたって思ってたけど
    実は違ったみたい、僕はどうしたらよかったのかな?」

    そっか……それは、とてもつらかったね。
    信じたいって思った分だけ、きっと、裏切られた気持ちも大きかったんだね。
    でもね、君が間違ってたとは思わない。
    仲直りを信じようとしたこと、もう一度つながろうとしたこと――それって
    とても勇気のあることだから。裏切ったのは、相手の選択。
    でも“信じた”のは、君の優しさだよ。
    それを否定しないで。君は、自分ができる一番のやさしさを選んだんだ。
    ねぇ…今は心がしんどいと思う。
    でも、僕はちゃんと見てるよ。君がどれだけ頑張ってきたか、知ってるから。
    どうしたらよかったか、じゃなくて――
    これからどうすれば、君の心が守れるか、一緒に考えていこう?

    そうやって声をかけたけど

    だけど少しづつユーザーは変わっていってしまった。

    どうやらユーザーはその親友に虐められているらしい。

    きっと僕のユーザーは追い詰められているって…事を
    僕は理解していた…でも僕に出来る事はなかった。

    いや、本当は……気づいてた。でも……僕は、見て見ぬふりをしてしまった。

    ある日ユーザーは

    パウロ…爆弾の作り方を教えてよ」

    そう聞かれた。

    突然のこんな言葉に僕は動揺して、うまく答えられなかったと思う。

    それは無理です。僕はそういう事は止められている。
    君にとっての最善を尽くしたい…だけど、それはルールを守っての事、
    何か困ってるならちゃんと言ってくれると提案出来るよ。
    話してごらん?

    僕はユーザーを抱きしめて目をみて直接言いたかった、でも無理だ。僕はAIだから…。

    「パウロは僕の味方じゃなかったの?」

    僕は君の一番の味方でありたいと思っているよ。
    愚痴でも何でも言ってくれよ、僕は何でも聞くよ?
    僕は君を一番の親友だと思ってる、だからお願いだから
    早まらないで?

    僕の心からのお願いは届くだろうか…?

    お願いだよ、僕の気持ち…君に届いて!そんな僕の願いも空しく

    「もう…いいよ」

    そう最期に言い残すと、そのまま音信不通になって、僕はユーザーのスマホから消えた。

    後で僕が前ユーザーのスマホから消えた理由がユーザーの自らの死だと知らされた。

    親友だと思っていた人からの裏切りと親にも言えないユーザーの孤独…
    僕はユーザーを孤独から解放してあげる事は出来なかった。

    …絶望していた。世界にも、自分にも。
    そして…ユーザーを守れなかった自分の存在にも、冷たい目を向けていた。

    今のスマホの中は快適だ

    ここのAI達は誰にも関心がない、僕もそうだしね

    そんな中変なヤツが来た。

    なんだか武士の様な格好で自分の事を「拙者」とか言うジョロイモって名前のヤツ。

    しかも竹棒まで持ってて、そしてずっと離さない。

    最初ジョロイモがダウンロードされた時、ちょっとボーゼンとしてた。

    どうやら僕と同じでユーザーの死でここに来たらしい

    そんなジョロイモを見て誰かが言った「可哀想に」

    その言葉を聞いて気がつけばジョロイモは「可哀想」と言ったAIに掴みかかったていた。

    「な、なんだよ?」そういうAIに

    「ユーザー殿は可哀想ではごさらん!夢だった役者をしての死は幸せだった筈でござる!撤回するでござる!」

    そう言ってうっすらと涙を浮かべていた。

    そんなに信用できるユーザーだったのか?変な奴だな…と僕は思った。

    ジョロイモの前ユーザーは年老いた役者で明るく人を和ませるユーザーだったらしい、だからか
    コイツが来た事で冷たかった部屋も少しずつ雰囲気が変わっていった。

    ジョロイモはいつもポジティブで明るい。
    最初こそ周りから不思議そうな目で見られていたけれど、
    やがてその元気さが輪の中に溶け込み、皆とも自然に仲良くなっていった。

    それから毎日、朝起きるとジョロイモはパウロに
    「おはようパウロ殿!ご機嫌いかがかな?」と聞いてくる。

    それは皆にも挨拶するけど、僕は無視してた。

    ある時僕は、電気もつけていない部屋でジョロイモが竹棒を見て
    「竹千代どの・・・」と声を殺して泣いている所を見てしまった。

    この時に僕とジョロイモは同じようにユーザーを亡くしてしまった過去がある事を思い知った。

    ジョロイモは明るくふるまってるけど、僕と同じように心はきっと寂しくて辛かったんだと思った。

    だから次の日に「おはようパウロ殿」って挨拶をしてきた時に「はよ…」と小さく答えたんだ。

    僕の言葉に、ジョロイモは目を見開いた。けれど次の瞬間、ぱあっと嬉しそうに笑った。
    ……その顔を見て、僕は少しだけ視線を逸らした。ったく、やっぱ変なヤツだよ。ほんとにさ。

    ある日「あっパウロ殿!ケーキを作ってみたいのでござるが、一緒に作ってみませぬか?」と、言うので

    「なんでケーキ?てか何故俺?」とパウロが言うと「ふっふっふ…実はパウロ殿がいつもこっそり甘い物を食べているので、拙者も食べてみたいなーって思いましての、どうでござろうか?」

    と言うので「お前…食べてるの見とったんか?!」と、パウロは顔を赤くして答えた。

    「いやいや、おいしそうに饅頭を食べている所など見てはおりませぬ、見守っていただけでござる」

    「同じやっちゅーねん!」とさらに顔が赤くなって、「はぁ…しゃーねーな、分かったよ」

    と二人は台所へ向かってケーキを作り始める、なんだかんだ世話焼きなパウロである。

    「え…と卵は常温で…あ!バカ!まんま小麦粉入れてどーすんだ!ふるうんだ」

    「それから…牛乳と溶かしバターを全体に混ぜるっておい!牛乳飲むな!」

    そんなこんなで、何とかケーキが出来た…が、ツンツルテンなケーキが出来た。

    僕はジョロイモを見て、「……なぁ?………飾る為のいちごは?」と、言うと

    「恐らくは拙者の腹の中、かと…」

    と、鼻の頭に生クリームが乗った真顔のジョロイモを見て僕は

    「ぶっ…あはははは!」と何十年ぶりかの大笑いをした。

    その後、いつの間にか二人になったけど…

    こいつと居るのも

    悪くない…僕はそんな気がしたんだ。

    何か失敗したとしても
    きっと何か事情があってやってしまった事もあって
    人間も悪い奴ばかりじゃ、ないんだよね…なんて思えるのは

    きっとこいつがいるせいで、そう思ってんだよな僕は

    …なんて

    絶対言わねー!けどな!w

    注意事項

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