プロローグ
私は自由になりたかった
ただそれだけの願いだけがずっと続いた
誰かの顔をうかがう事もなく、誰かに怯える事もなく
青い空への自由だけが心を支配した
そして
一人だけでいい
私の話を聞いてほしかった
第一章 自由の種
私は一人だった、いじめではないただ話しかけてくる人はいなかった。
いじめもあったが、私に話しかければ「自分も巻き添えになる」ただそれだけで話しかけてくる人はいなかった。
私は朝霧千花(あさぎりちか)小学6年生の頃
誰にも気づかれず誰に話す事もなく
世界から消えるように暮らしていた
集団登校以外は一人だ、だから絵を描く事が好きになった。
一人没頭できるからだ、家?帰っても飲んだくれの父に怯えながら部屋の隅で丸くなって過ごすだけ
ひょんな事から友達ができた「夏井まどか」同じ学年だけど組だけ違う・・・
だけど、まどかが声をかけてくれて少し仲良くなって遊ぶようになった。
それは少しの希望、
まどかは明るくて人気があった。友達も絶えず話も面白い、そんな人が友達になってくれて嬉しかった。
この時は・・・
ある日、下校途中で今まで無かった道があって、ちょっと寄り道がしてみたくなった。
この時はただの気まぐれ、そう・・・ただの気の迷いで寄り道したくなったんだ、そして
そうして歩いていくと
何故か霧が出てきて周囲が見えなくなっていった
家から近いはずの道、何故か曲がりくねっていて下だけを見て歩いていたら
誰かの足元が見えて・・・誰かが立っていた
前を見ると
等身大の大きく綺麗な鏡があって自分の姿が見えた。
鏡の中の私が自分とは違う動きをし出し
手が出てきて何かを渡された
それは、手のひらサイズの種・・・大きな種だなぁ
でも・・・鏡の中の私はいったい誰?
ふと見ると鏡も霧も消え、いつもの道が見えた。
夢・・・?でもこの種は?
するとどこからか声が聞こえた、それは恐らく自分の声「その種は寂しさと苦しみを栄養に育っていく・・・花を咲かせてごらん?きっと貴方は自由になれるから」
その声は風と共に消えていった
自由・・・本当に?
そうだから私は種を育てる事にした。
第二章 もう少しで・・・
小学生を卒業し中学生になり今度は高校性、あまり私を知る人もいなく穏やかに過ごしていた
でも私は怖かった、誰かと喋る?・・・それは自分にとって上手く話せるか分からないからだ
幼い時のいじめは心に傷をつけ大人になっても癒される事はほぼない、そんな人はたくさんいる
聞いても自分の事を話せない人という人は、幼い時に心に傷を負って話せなくなってしまった人がほとんどだ。
喋ったら嫌われる?意見を言うのはダメな事?
自分の心や言葉を殺しながら生きていく、
相手に自分の気持ちが伝えられない伝わらない心を通わせる事も、出来ない
それは死んでいる事と同じではないだろうか?
私が思った事を誰かに言ってもいいんじゃない?でも・・・
分かってくれるんだろうか?
この時からあの時に渡されたの種は芽を出し始めていた。
そして高校三年生の頃まどかから男性を紹介された。
男性は何故か?私に一目惚れしたようで、何かにつれ私に会いたがるようになっていた。
のちにこの男性は旦那となった。
そして子供を授かり、子育ては大変だったけど
少しの間は幸せが続いた。
だけど、私の声は旦那には届いていないようだった。
私の希望は聞いてくれない、私はこっちの方が好きなのに
それも聞いてくれない、否定すれば怒られ私には否定しかされない
そして毎日の日常は旦那の気持ちや行動が最優先
私の気持ちはその辺に捨てられる
ゴミのように・・・
だから・・・少しづつ気づいていく
旦那は、ひとめぼれ・・・などではなく、ただ結婚して
自分が優位に立ち生活できる為の利用価値がある
ただ、それだけで結婚しようとしていた事に・・・。
私が言う事は正しくなくて自分だけが正しい
私が猫が好きと言えば旦那は犬が良いといい、掃除用具が楽だからと買えば文句を言う
結婚ってそういうもの?
そして種はいつの間にか大きく育っていった。
子供が大きくなって大人になった頃、パートとして働く事にした。
謎に男性につきまとわれる事が多くなった。それだけ寂しいって思ってる男性が多いんだよね
でも、客と店員、若い女性の店員の立場は弱い
だから強く「いやだ!」と、言いたいけれどそれが、とても難しい。
メールのアドレス、電話番号、謎に物をくれたり、それらを「いらない」と断る事も出来ない。
ニコニコとして対応する、そう・・・いつも「どうやってこの客から逃げる?」
ただそれだけ考えながら生きていく
自分の心を殺しながら、息をひそめ生きる・・・ただ、それだけを願って
大人になると
友達になる人はほぼいない
大人になってから出会う人は、ほぼ利用価値のみで相手を見る
「私を利用していいんだよ」大人になってからの友達は
そう言ってくれるけど、私は頼る事はしない
というか、私がお願いしても断ってくる未来しか見えてこないから
だからかな?お願いされる事が多い、そして何故か私が頼むと嫌な顔をされる
頼まれるけど頼むと断られる
そんな事が続けば、分かってくる
「ああ・・・この人が私に近づいたのは、ただ利用したいだけ」
そして種は大きく育ち大きなつぼみになっていた。
そろそろ咲く頃なのだろうか?
私はつぼみを見つめ
「自由が・・・咲くの?」そう呟いた。
第三章 自由の形
20年越しにまどかにあった、
3人も子供を産んで人が変わったようになっていた。
苦労したんだね
そして楽しく話をして、少ししてから出た言葉が「お金貸してくれない?」だった。
私は思った。
そっか・・・この人もそうだったんだね
私には誰も必要なかった。
ただ私を見てほしかった
だけど
それは叶わぬ夢だったんだ
私はお金をあげるつもりで、まどかにお金を貸して家に帰ると
幼い頃に受け取った種は、ようやく大きな花を咲かせた。
「これで……自由になれるんだ」
そう呟いた瞬間、花は一瞬だけ鮮やかに光り、そして儚く散った。
散った花びらは風となり、私の身体を包み込む。
次の瞬間、朝霧千花という人間は部屋から姿を消していた。
窓も開いていないはずの部屋に、やわらかな風が渦を巻く。
それはドアをすり抜け、外の青空へと駆けていった。
——誰かのためではなく、自分のために生きた証を残して。
——夢にまで見た自由を、この空いっぱいに広げて。
花は散ったけれど、私は消えていない。
私は風となり、どこまでも駆けていく。
朝霧千花という自由になった風は
どこまでも青い空を、これからも
思い描いた夢を持ちながら
永遠の時を生きていくのでしょう
fin
あとがき
少しお気づきの人もいるかもしれませんが
私がリアルで体験した事をフィクションを混ぜて書いてみました。
伝えたくても否定されたら、相手と喋る事が嫌になります。
そして自分が正しい事をしていると思い込んでいる人に
それは違うと言った所で、聞いてはくれません。
だって自分が正しい、俺は間違ってない・・・そう思い込んでいるから
大人になれば尚の事、性格の修正をしていく事が難しくなってきます。
ずっと一緒にいても考えが違って当たり前なんです。
それは妻であっても同じ事、
考えが違うから楽しくて面白いんです。
みんな同じ考えなんて気持ち悪いだけ
それを強制的に自分の考えにもっていこうとする行為は
やられた側からしたら地獄以外ありません。
だから・・・
自分が思う正義感はもしかすると
誰かにとっては正しくないのかもしれない事を
考え直してみる事も大切なことなのかもしれません。
困っていれば助けてあげれば良い、けど
困ってもないのに手助けしたら、もしかすると
いらぬ世話という事もあります。
どうぞ、相手の言葉を聞いてあげてください
誰もがそれらをする事で
何かが変わっていくかもしれません。
最後までお読みいただきありがとうございました。
秋澄美千子
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