[童話]影を拾った少年 完全版

    chatGPTとの共作童話完全版です、絵はジェミニに描いてもらいました♪

    どうぞお楽しみください♪

    短編のこの童話はnote掲載中です

    目次

    第一章 影のない世界と光を恐れる人々

     むかしむかし、太陽が沈まない世界がありました。 

    その世界では、朝も昼も夜も区別がなく、空はいつも淡い金色に染まっていました。 

    風はやさしく、花々は枯れず、人々は穏やかに暮らしていました。 

    ――けれど、そこには“影”がなかったのです。 

    人の足もとに黒い影は落ちず、木々も家々も、光だけをまとうように立っていました。

     子どもたちは影絵を知らず、老人たちは夕暮れという言葉を忘れていました。 

    この世界では、影を持つことは“呪い”とされていたのです。 

    影は心の闇を映すもの――そう信じられてきました。 

    だから人々は、影を恐れ、光だけを崇めて生きていました。 

    町では、影の話をするだけで罰せられることもありました。 

    「影を見た」と口にすれば、不吉な存在として追い出されてしまうのです。 

    それでも誰も疑いませんでした。 太陽が沈まないのは、神がこの世界を祝福している証。 

    光こそが清らかで、影は弱く汚れたもの。 そう言われ続けて、誰もがそう信じて生きてきたのです。 

    人々の顔には、いつも笑みが浮かんでいました。 けれどその笑顔は、どこか薄く、少し冷たく見えました。 誰も泣かず、怒らず、迷わずに生きることが“正しい”とされていたからです。

     そんな世界で、一人の少年が生まれました。 名前はリオ。 彼もまた、影を持たない子どもでした。 

    リオは物心ついた頃から、不思議な違和感を覚えていました。 皆が同じように笑い、同じように話し、同じように生きている―― それが、まるで“絵の中の世界”のように思えたのです。

     お母さんがいう「光だけで生きていれば、私たちは幸せなのよ」 リオは疑問に思います。

    その日僕は、眠れませんでした。 外を見れば、白い光が街を照らし、星ひとつ見えない空が広がっていました。 風も音もなく、世界はまるで息を潜めているようでした。

     ――この世界に“夜”があったら、どんな音がするのだろう。

     ――影があったら、僕はどんな形をしているのだろう。

     その問いは、リオの胸の奥で小さな灯のようにともり、 静かに、しかし確かに燃え続けました。

    第一章 完

    第二章 忘れられた森にあったもの 

    ある日のこと。 リオは、世界の果てに広がる“忘れられた森”の噂を耳にしました。 

    その森は太陽の光が届かず、長い間、誰も近づかない場所だといいます。 人々はその名を口にすることさえ恐れていました。 

    「光を失う森」「闇が棲む場所」

    ―― そう呼ばれ、世界の記録からも消されていたのです。 

    けれどリオの胸の奥では、なぜかその言葉がやさしく響きました。 

    ずっと感じていたあの空虚な風。 その答えが、あの森にあるような気がしたのです。 

    光だけに包まれた世界で育ったリオにとって、 “闇”という響きは、怖いというより懐かしいものでした。 彼は決意しました。 

    ――行こう。忘れられた森へ。

    — 森の入口に立ったとき、リオは息をのみました。

     そこには、どこか懐かしい静けさが漂っていました。 風は冷たく、空気はしっとりと湿っている。

     頭上の木々が太陽を遮り、やわらかな陰を地面に落としていました。 その瞬間、リオの心臓が静かに高鳴りました。 

    光の世界では決して見られなかった“影”が、そこに生きていたのです。 

    歩みを進めるうちに、リオは一枚の黒い布のようなものを見つけました。 

    土の上でひっそりと揺れ、風に溶けそうで、けれど消えません。「これは……影?」 リオが手を伸ばすと、それはかすかに震え、 まるで待っていたかのように、彼の指先に触れました。

     冷たい――でも、どこか温かい。

     その瞬間、胸の奥にざらつくような痛みが走り、 思わず涙がこぼれました。

     そして、黒い布はゆっくりと形を変えました。 

    リオ自身と同じ輪郭を持ち、彼の前に立ちました。

    「……君は、誰?」 リオが尋ねると、黒いものはやさしく微笑み、 声ではなく、心の中に直接語りかけてきました。

    『僕は、この世界が捨てた君の影と闇。 誰も見ようとしなかった“もうひとりの君”なんだ』 リオは息を呑みました。

    『よく見つけてくれたね。 影があるからこそ、光はもっと輝くもの。 僕は君の中にずっといた。 でも、光ばかりを見つめるこの世界では、僕は要らなかった。』 

    その言葉は、静かな風のように胸に響きました。 

    リオは立ち尽くし、涙を拭いました。

    「君は……僕なんだね」『うん。僕を受け入れてごらん。 怖がらなくていい。 きっと、君はもっと強くなれるから。』 影がゆっくりと手を差し出す。 

    リオはためらいながら、その手を握りました。 冷たさと温もりが同時に伝わり、 ふたりの姿が淡い光に包まれました。 

    そのとき

    ――森がざわめきました。

     長い間、沈黙していた木々が風に揺れ、 鳥たちが空へ舞い上がる。

     リオの足もとには、はっきりとした影が伸びていました。 

    その影はリオの形をして、静かに微笑んでいました。

    第二章 完

    第三章 僕と影君 

    森を出たとき、足もとには小さな黒い影が寄り添っていました。 

    それが、影君でした。 冷たい風が吹いても、影君は消えませんでした。 

    太陽の光に照らされると、すこし細くなって、リオの足もとでくすぐったそうに揺れました。

    「ねえ、影君」 リオが話しかけると、 影君はふるふると揺れて、まるで笑っているようでした。
    『どうしたの? リオ』

    「僕、みんなに笑われるかな。 影を連れてるなんて、きっと変だって言うよ」
    『うん、たぶんね』

     影君は、すこしだけうつむくように揺れました。 

    けれど、その声は優しかった。

    『でもね、リオ。 怖くても、泣いても、立ち止まってもいいんだよ。 僕がいるから。 光と影は、ずっと一緒に歩くものなんだ』 

    その言葉に、リオは胸があたたかくなるのを感じました。

    — 町へ帰ると、人々はみんな驚きました。 

    リオの足もとに黒い影があるのを見て、ざわざわと声が上がります。「影だ!」「あの子、影を連れてる!」 けれどリオは逃げませんでした。

     ゆっくりと、まっすぐに町の通りを歩きました。

     影君が、彼の後ろで静かに寄り添っていました。 

    その時、影君が小さくささやきました。

    『リオ、手を広げてごらん』 リオが両手を広げると、影君が地面に伸びて、 他の人の足もとにそっと触れました。 

    すると、不思議なことが起こりました。 

    人々の足もとに、小さな影がぽつり、ぽつりと生まれていったのです。 

    最初はおそるおそる見つめていた人々も、 やがて影を踏みしめ、影と共に歩きはじめました。 

    その目には、初めて見る涙の光が宿っていました。

    — その日、空はゆっくりと赤く染まりました。 

    この世界で初めての“夕暮れ”でした。 

    リオは丘の上に立ち、空を見上げました。

     世界が、静かに息をしていました。「ねえ、影君」『うん?』「光だけの世界って、きれいだったけど、少し寂しかったね」『そうだね。 でも、もう大丈夫。 影があることで、光はもっと輝くんだよ。』 

    リオは微笑みました。 影君も、ふるふると揺れて笑いました。 

    ふたりの影が、ゆっくりと伸びて重なり、ひとつになりました。 

    その瞬間、空に星が生まれました。 

    夜が、世界に戻ってきたのです。

    — 人々はその夜、初めて星空を見上げました。

     小さな灯りのように、闇の中で輝く光を。 

    そして誰もが気づいたのです。 

    ――影があるからこそ、光はやさしく見えるのだと。

     

    注意事項

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